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007の権利問題を整理する その2

前回からの続きです。

2.ユナイテッド・アーティスツへの売却

イオン・プロダクション(以下EP)の共同プロデューサー、ハリー・サルツマンは娯楽要素を追求し、コメディ映画になっていた007に嫌気がさし、「黄金銃を持つ男」を最後にプロデューサーの降板を表明します。これはもう1人のプロデューサー、アルバート・ブロッコリにとっても寝耳に水の話でした。
イオン・プロダクション
イオン・プロダクションのロゴ


ブロッコリは説得を続けますがサルツマンは耳を貸さず、それどころか自身が持つ映画化の権利をブロッコリではなく、映画スタジオのユナイテッド・アーティスツ(以下UA)に売却してしまいます。これにより007の映画化の権利は、EPとUAの2社が保有することになりました。
ユナイテッド・アーティスツ
ユナイテッド・アーティスツのロゴ

これまでEPが主導してきた007は、UAとの共同作業になります。しかしUAは80年の「天国の門」で記録的な赤字を計上し、倒産の危機に追い込まれます。そのUAを救ったのが、別の映画スタジオMGMでした。UAは吸収されMGM/UAとして再出発をします。しかしこれもMGMの資金難で、すぐに暗礁に乗り上げます。
MGM/UA
MGM/UAのロゴ

経営危機のMGM/UAを買収したのかが、ターナー・ブロードキャスティング・システム(TBS 現在のタイム・ワーナー)で、この時に多くの映画の版権が整理、移管されます。しかしTBSのメインバンクが、巨額の負債を抱えるMGM/UAの買収に難色を示し、買収から2ヶ月ちょっとでMGMの経営に関与していた投資家のカーク・カーコリアンに売却されてしまいました。さらにカーコリアンは、負債を返済するためにMGM/UAの資産をバラバラに、あちこちに売却していきます。

この混乱で、多くの映画の版権が誰のものか不透明になってしまいました。もう問題は007シリーズだけにとどまらず、「ロッキー」シリーズ、「ポルターガイスト」シリーズなど約4000本の映画の権利も曖昧になってしまいました。特にTBSとMGM/UAの間で、どの映画のどの版権をどちらが所有しているかが問題になり、双方の弁護士が多大な時間をつぎ込んで調整と交渉に挑みました。

この影響で、007シリーズは、「消されたライセンス」以降、6年間も製作されませんでした。EPは、サルツマンがUAに売却した半分の映像化権のために、映画の製作ができなくなったのです。95年に再びカーコリアンがMGM/UAの社長に就任し、権利問題の整理がついたところで、007シリーズもピアーズ・ブロスナンが登板した「ゴールデンアイ」から再開されました。

次回が最終回です。
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007の権利問題を整理する その1

イアン・フレミングの小説007シリーズは、映画化されて世界的なヒットを記録しますが、映画化の権利問題がややこしくなっています。どれだけややこしいのか、それを解説したいと思います。

1.サンダーボール作戦訴訟

イアン・フレミングは、007の映像化権利を、安値で複数に売却しています。その中に、アルバート・ブロッコリとハリー・サルツマンがいました。両者は互いが持つ映像化権利を買い取ろうとしますが、映像化に掛かる費用を捻出するため、紆余曲折を経て共同で映像化することになりました。これがイオン・プロダクション(以下EP)の設立につながります。
アルバート・ブロッコリとハリー・サルツマン
左:アルバート・ブロッコリ 右:ハリー・サルツマン

EPは映画「007 ドクター・ノオ」を成功させ軌道にのると、次々と007の映画化に着手します。これに気を良くしたフレミングは、自らが映画化することを目論んで、友人達とザナドゥ・プロダクションを設立します。この時、映画作家のケビン・マクローリーが中心となって、いくつかの映画用の脚本が作られました。しかしザナドゥを不安視したフレミングは、一方的にこの契約を解消してしまいます。

フレミングはこのマクローリーらのアイデアを無断で使用して、「サンダーボール作戦」を書き上げて発表してしまい、マクローリーらから訴えられることになります。63年にマクローリーが勝訴すると、映画「サンダーボール作戦」のクレジットにはマクローリーの名前も入れられました。これで一旦は決着したかに見えました。
007 サンダーボール作戦
007 サンダーボール作戦のポスター

この問題が尾をひくのは、マクローリーのアイデアに、犯罪組織スペクターと、その首領ブロフェルドが含まれていたことです。他の作品にもスペクターやブロフェルドが登場したことにマクローリーは憤慨し、差しどめの要求が出され、「ダイヤモンドは永遠に」以降、スペクターは登場しなくなりました。この問題で和解が成立したのは、なんと2006年でした。

「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」は、マクローリーが、「サンダーボール作戦」をリメイクしたものです。EPとの約束で、10年間はマクローリーが映画化しないと決められていたので、10年を過ぎてから映画化の動きが始まったものです。しかし内容を巡って再びEPと訴訟になり、紆余曲折を経て完成しました。
ネバー・セイ・ネバー・アゲイン
ネバー・セイ・ネバー・アゲインのポスター

ちなみに製作したのはタリア・フィルムで、本作の制作者ジャック・シュワルツマンの会社です。社名は妻のタリア・シャイア(ロッキー・シリーズのヒロイン、エイドリアンが有名)から名付けられました。

それはともかく、ショーン・コネリーの復活で話題をさらったものの、同年公開の「007 オクトパシー」には興行成績で負けています。

次回に続きます。

日本映画と海外マーケット

以前、日本で映画を作っても利益を出すのが難しいので製作費も安くなるという話を書きました。ではどうしてアメリカや中国、韓国に比べて製作費が安いのでしょうか?それを少し考えてみたいと思います。ちなみに韓国映画の平均製作費は60億ウォン(6億円弱)、中国の平均額はよくわかりませんが、大作映画とされる製作費の下限が1億元(16.6億円)なので、平均は10億円前後と言われています。
女帝(映画)
※中国映画「女帝」

製作費の安さは、興行収入の低さに原因があると前回書きましたが、アメリカや中国の製作費の高さは興行収入が高いからです。「バットマンVSスーパーマン」は2016年の日本で興行収入が18億円でしたが、全世界で850億円以上の興行収入を叩き出しています。製作費が250億円以上かかっていますが、これなら大きな利益が出ているはずです。

ハリウッドは世界最大の映画史上のアメリカで公開され、さらに外国での公開が多いので、ふんだんな製作費をかけることが可能です。韓国も同じで、韓国のマーケットは小さいですが中国での人気が高いので多くの製作費をつぎ込むことができました(昨年、中国政府は韓国のメディアの上映や演奏を禁じたので、状況が変わりそうです)。そして中国は急成長する市場を自身で抱えているのが大きいようです。さらに東南アジアへの輸出も熱心にやっています。中国は輸出のため、他国との合作という手法を多く採用しているのも特徴です。

つまり映画は自国に巨大なマーケットがあれば有利で、さらに輸出もできればさらに有利になるわけで、その両方をできているのがアメリカというわけです。自国のマーケットが小さい韓国は輸出し、中国は熱心に自国のマーケットを成長させつつ輸出も行っているわけです。では日本はどうなのでしょうか?日本は映画のマーケットとしては、世界第2位の巨大マーケットなのです。そのため、韓国などに比べると格段に有利な立場にあると言えます。

自国に巨大なマーケットがあるという利点が、現在は悪い方向に向いていると思います。自国に巨大マーケットがあるということは、積極的に輸出する必要がないということで、いわゆるガラパゴス化した映画が増えていきました。演技力や脚本に合った配役かよりも、その時点で人気があるタレントを起用するのも、その一例です。そしてそれが多額の利益を生み出せばよいのですが、国内でも今ひとつ通用しなくなったのが現在の姿です。

リスクが高く、出資者が減ったために生み出されたのが製作委員会制度で、現在の邦画の多くがこの方式を採用しています。複数の出資者が集まることでリスク分散ができますが、出資者が増えるということは口を出す人も増えるということで、それぞれのスポンサーは例えば自社のCMに出ているタレントの映画の出番が少ないと不満を言ったりします。映画によっては、監督は撮影や演技指導どころか現場の調整係になっているという話も聞こえてきます。もっともどこまでが本当かはわかりませんが。

製作委員会の弊害が指摘されだしてしばらく経ちますが、昨年は東宝が「シン・ゴジラ」で製作委員会制度を使わずに自前で資金を用意して、大ヒットするということも起こりました。日本は巨大なマーケットを持っているのですから、やり方によっては大きく化ける可能性も秘めています。本来はアメリカに次いで映画大国であっても、おかしくない国なのですから。

日本の映画はなぜ製作費が低いのか

邦画の製作費の平均額は3.5億円で、「マッドマックス 怒りのデスロード」は3分あたり4億円の製作費が使われている。昨年、映画評論家の町山智浩氏のこんなツイートが話題になりました。邦画の製作費はハリウッドに比べると低いのはもちろん、中国や韓国に比べても低くなっています。なぜこんなに貧乏なのでしょうか?
マッドマックス怒りのデスロード
※マッドマックス 怒りのデスロード

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バブルの匂い 映画「BEST GUY」

織田裕二が「東京ラブストーリー」でブレイクする前、そしてバブル絶頂期の90年12月に公開された映画「BEST GUY」は、見た方がいい。唐突で無理な展開に、未回収の伏線を散りばめ、バブル期のダサさを全開にした舞台に、ザ・大根役者的な演技が堪能できます。それを航空自衛隊が協力したのですから、他では味わえない秀逸さなのです。
ベストガイの織田裕二

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映画「ロリータ」の猥褻な攻防

ナボコフの小説「ロリータ」は、ベストセラーというだけでなく、今日も「ロリータ・コンプレックス」(ロリコン)や「ロリータ・ファッション」などの言葉で影響を与えています。今回は、その小説をもとにスタンリー・キューブリックが製作した62年の映画「ロリータ」の話です。
ロリータ

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気前の良い慰謝料

離婚の慰謝料といえば、ロシアのアブラモビッチ氏が1兆円払ったとか、メディア王のルパート・マードック氏の1600億円とか、桁外れの金額が話題になります。しかし今回の話は、自らの原因で離婚することになったにも関わらず、1ドルを支払ってもらった男の話です。
ゲイル・アン・ハートとジェームズ・キャメロン
※1ドルもらった女と払った男

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007は上司の査定を恐れていいか?

氏名:ジェームズ・ボンド
職業:MI6所属の諜報員
家族:独身(結婚歴あり。子あり)
酒:こだわりなし
職業観:現職に不満があり、転職を考えている

イアン・フレミングの原作では、ボンドは崖っぷちの人生で、遅刻を繰り返すなど勤務態度が問題でクビになりかけたりします。さらに官僚組織の末端という不自由さに嫌気がさしていて、上司の査定を気にしています。

007 イラスト

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「特攻大作戦」という反戦映画

67年公開のアメリカ映画「特攻大作戦」は、バンバン鉄砲を撃って、ドッカンドッカン爆発が起こって、当時としては暴力描写がキツイですが、この好戦的な物語に反して強烈な反戦映画になっていることは、見落とされがちです。
特攻大作戦

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アメリカと映画と暴力の連鎖

ジョン・ヒンクリーという男が、35年収容されていた精神病院を来月退院することになりました。ヒンクリーはレーガン大統領を暗殺しようとして、逮捕された男です。この事件は遡ると、映画「時計じかけのオレンジ」にたどり着きます。
ジョン・ヒンクリー
ジョン・ヒンクリー

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プロフィール

井上 毅

Author:井上 毅
はねもね
福岡県出身
東京都在住
以前やっていたブログ「はねもねの独り言」の続編です。

外資系金融機関に勤めながら、あちこちに出没しています。

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