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攻殻機動隊SACは右翼的か左翼的か?

2000年に放送されたテレビアニメ「攻殻機動隊 Stand Alone Complex」(以下SAC)は、しばしば国内で左翼的と言われてきました。しかし最近になって、韓国では右翼的と言われていることを知りました。なぜ180度違う意見が出るのでしょう?SACは世界設定が複雑で、とても興味深いのでまとめてみようと思いました。一度見ただけでは、世界観がさっぱりわからないSACの世界を見てみましょう。
攻殻機動隊Stand lone Complex
※公安9課

※この設定はSACの前半にあたる「笑い男」事件には不要の設定ですが、2ndGIGの「個別の11人」事件では重要になってきます。

1996年、アメリカとEC(ヨーロッパ連合)は、ソ連を相手に核戦争を始めました。第三次世界大戦の始まりです。ほぼすべての核兵器を撃ち合った結果、アメリカ・EC連合が短期で勝利します。1999年、疲弊した米ロECと、大戦によるダメージが少ないアジア諸国との摩擦が強まり、東京が核攻撃されたことで第四次世界大戦が始まります。

2005年にアジア連合が結成され、戦場はAI兵器や義体化された兵士などの実験場と化し、戦争は長期化します。2024年にアジア連合の勝利で戦争は終結し、日本は戦後復興に向けて大量のアジア難民を招慰難民として受け入れ、安価な労働力として活用しました。また核兵器により壊滅した東京は、大日本技研が開発したマイクロマシン散布技術により核の冬を終わらせ、「日本の奇跡」と呼ばれました。日本は急速に経済力をつける中で招慰難民のスラム化、憲法9条の改正問題、米帝(3つに分裂したアメリカの1つ)との日米安保条約の締結など、問題が山積の状態です。

中でも招慰難民の問題は、深刻化していました。朝鮮半島は戦火に飲まれて国家は壊滅状態で、半島から300万人の難民が日本に来ています。難民はスラム街を形成し、自治権を要求するようになりました。それに対しインディビデュアリストと呼ばれる国粋主義者達が猛烈に反発し、中でも「個別の11人」と呼ばれる過激な団体は自害して難民の排除を訴えます。
個別の11人
※個別の11人のマーク

内閣情報庁の合田一人は「個別の11人」を利用して難民を蜂起させ、さらに難民が核兵器を手に入れたと流布し、国民の不満を高めたところで、米帝の協力を得て招慰難民への武力攻撃を画策します。内務省公安部公安9課(通称、攻殻機動隊)の実働部隊の隊長、草薙素子(通称、少佐)は、合田の計画を阻止するために動き始めました。

我慢強くここまで読んでいただいた方は、もうお気づきだと思いますが、この設定は第二次世界大戦以降の歴史の焼き直しです。招慰難民は在日朝鮮人のことで、彼らを武力排除する合田を主人公の草薙素子らは、全力で阻止しようとするのです。左翼的だと言われた理由は、在日朝鮮人に同情的であり、主人公らが彼らを守ろうとするからのようです。さらに総理の茅葺(かやぶき)が親中派というのもあるようです。

韓国で右翼的と言われたのは、日本が戦勝国であり、世界的に見て目覚ましい経済成長を遂げ、在日朝鮮人を国民の敵に仕立てるからのようです。右翼史観、左翼史観の両方とも短絡的に見えます。SACで提起されているのは、このような短絡的な政治議論ではありません。

人体のパーツを義体化し、脳までも電脳化する世界で、個人を定義するのはなんなのか?というシリーズを通じて投げかけられる疑問を軸に、「スタンド・アローン・コンプレックス」と名付けられた行動心理を問いかけてきます。個人が集まった時に、思想や行動を共有し、それがまるで自分の考えや自分で判断したことのように主張することは、現実の世界でも起きていることなのです。

こうしたテーマを無視して右翼だ左翼だというならば「このアニメは童貞差別だ」と言うことも可能で、本当にどうでも良い議論になってしまいます。そんなことよりも、個人を特定するのは何なのか?意識は本当に自分だけのものなのか?という疑問を登場人物と一緒に考える方が楽しいですし、難しいことは飛ばしてアクションを楽しんだり、ミステリーとして楽しむ方が健康的だと思いますよ。

追記
なお、最初に書いた物語の世界設定は複雑ですが、これはほんの一部に過ぎません。それが断片的に語られるので、難解な印象を与えています。なおSACだけでなく「東のエデン」も参照しています。
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プロフィール

井上 毅

Author:井上 毅
はねもね
福岡県出身
東京都在住
以前やっていたブログ「はねもねの独り言」の続編です。

外資系金融機関に勤めながら、あちこちに出没しています。

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